日本の祭りレポート
やまきたのぼうおどり
いまから300年ほど前、領主の山内規重(のりしげ)は蟄居を命じられます。そこで家臣が暇つぶしに始めたのがこの棒術。それは後に坂本竜馬が体得した小栗流です。
神社の境内に繰り広げられる棒術の若者らは白い鉢巻きに白い装束、ブルーのタスキが秋の光を浴びて爽やか。樫の棒を打ちあうその音はカツカツと乾いた音を響かせ、“サイ! サイ!”の掛け声もキビキビと勇ましい。さらに奉納は獅子と猿田彦のかけあいに。この組み合わせは極めて珍しいもの。この棒術に新しい若者が加われば、古参のものから順に脱退するきまりとか。直会の席で祭り人が言いました。“祭りは大人を子どもにし、子どもを大人にする契機です”と。この棒術がいまに至るまで伝承されているのはいかに領主が領民に敬愛されていたかを物語るもの。
【取材・文:苦田秀雄】
山北の棒踊りは約300年前、山内家一門が10年間に渡り幽閉されていた際、退屈を紛らわすために家臣らが地域の若者たちを集めて棒術を指導し、披露したことが始まりとされています。現在では、20人で行う本棒と二人一組で対峙する小棒で構成され、郷社浅上王子宮の秋季大祭にて、青年たちによって奉納されています。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り