日本の祭りレポート
つのやまかぐら
高知県梼原は標高1000メートルほどの高知県と愛媛県境の町。キャッチフレーズは「雲の上の日常」。坂本龍馬たちが愛媛に抜け、船で長崎を目指した「脱藩の道」です。
「津野山神楽」は町内各所の神社の秋祭りで開催されるもの。由来は延喜13年(913)藤原経高がこの地にもちこんだとされます。演目は「宮入り」から「四天の舞」までの18座。所要時間8時間。四国カルスト高原を初秋の風が吹きます。厳しい環境での豊作への感謝の気持はことさら大きいものがあり、テンポのいいリズムに荘厳な舞。喜びが全身にあふれます。若い母親に抱かれた幼児は怖いもの見たさ。人々の演者への掛け声は煮詰まった人間関係を感じさせます。この神楽は彼らの日常のひとコマなのでしょう。
【取材・文:苦田秀雄】