日本の祭りレポート
しかうみじんじゃのごじんこうさい
ここは漢倭奴国王(かんわなのこくおう)の金印が発見された福岡市志賀島。海洋民族阿曇族の故郷です。夕刻志賀海神社にまったく祭りの気配なし。御神燈が静かに風に揺れるのみ。暮れゆく玄界灘を眺め下ろしていれば、いつのまにか500人にも及ぶ人々が境内に。神事を終えて3基の神輿が太鼓や笛・ささらの囃子に先導され、ゆっくりと頓宮へ。そこで舞われるのが「龍の舞」「鞨鼓(かっこ)舞」「八乙女の舞」。なかでも鞨鼓を打ちつつ舞う「鞨鼓の舞」は日本舞の原点。舞手は豊玉毘売命(とよたまびめ)の子供である阿曇磯良(あずみのいそら)で、長く海底にいたことにより顔に牡蠣殻がつき、醜いため顔に白い布を垂らしています。これほど余計なものをそぎ落とした祭りがあったでしょうか。祭祀の原点です。
【取材・文:苦田秀雄】
博多湾の志賀島は、国宝「漢委奴国王」の金印が発見された小さな島。古代、ここから海洋民族「阿曇族」は日本海を旅しました。さらに川を遡った阿曇族は、信州に阿曇野を形成しました。志賀海神社の神職は今も阿曇の末裔です。御神幸祭の舞には、古代の祭紀の痕跡が残っており、小さな島から古代ロマンを紐ときます。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り