日本の祭りレポート
せいないじのてづくりはなび
諏訪神社の境内で仕掛け花火の葡萄(ぶどう)棚にご神火が点火されました。棚にぶら下がった葡萄がじわじわと青白い光りを放ちます。次に大尺車(だいしゃくま)。さらに綱火を伝って巴車(ともえくるま)、回転手筒、花笠、銀河ロード、大滝、棚火、噴水、メリーゴーランドへと続く。猛烈な連続技。巨大な火の蝶が、火のトンボが飛び、これでもかと仕掛け花火は続きます。フィナーレは遠州、信州、三州を意味する大三国(だいさんごく)の点火。若者はトランス状態で火の粉を浴びます。花火は火薬の微妙な調合具合によって様ざまな模様を描き、その作り方は村の秘伝中の秘伝で、一子相伝とされているのです。夜の信州伊那の山奥に咲く火の花。それはとても深く神秘な空間。取材のとき、初の女性頭領になった若い女性は祭りが終われば山梨へ嫁ぐとか。大三国の火の粉を浴びながらいつまでも娘を抱きしめる父親に皆が涙しました。
【取材・文:苦田秀雄】