日本の祭りレポート
おおたさんじんじゃれいたいさい
ここははるか奥尻島を望む最果ての港町。太田神社の本殿は海からそそり立つ標高485メートルの断崖絶壁の上にある洞窟の中。アイヌの伝承によれば、この山上には「オオタカモイ」という神がおられるとか。以来ここは蝦夷地の一大聖地とされ、この祭りは航海の安全と豊漁を祈願するものとして続けられました。命がけの礼拝です。
祭りの日、12人の白丁の若者らが、登山崇拝の「御山掛」をします。その間、麓の拝殿で舞われるのは松前神楽。その神事や神楽は実に愉快。神職、舞手、氏子全員が心から楽しみ、厳粛な空気が全くないのです。幼児が泣けば、神職が大声で“うるさい!”と叱ります。深い皺の刻まれた漁村の長老たちの顔も祭りの有り難さに輝きます。
【取材・文:苦田秀雄】
北海道では古くから航海の守り神として信仰されてきた、太田山神社。
本殿は太田山の中腹、40度の急勾配の石段、ロープづたいの険しい山道、90度の絶壁7メートルを鉄鎖で登ったところにあります。例大祭に合わせて「御山掛け」という行事も行われ、白装束を身にまとった若者たちが本殿を目指します。