日本の祭りレポート
むしょうののだいねんぶつ
激しく打ち鳴らされる太鼓と鉦。一斉に唱えられる経文。白装束の人々が剣を手に裸足で踊ります。この景色、もしかしたら死後の世界か。その伝説は雛鶴姫の悲劇です。彼女の夫である護良親王は足利方によって28歳で非業の死をとげます。姫は夫の首を手に鎌倉街道を抜けてこの地にたどり着き、ここで体調を崩し、幼子ともども落命。「無生野の大念仏」はこの悲劇を忘れまいという地域の人々の優しい想いから始められたもの。「無生野」の地名は悲劇の「無情」からきたとされます。これは宗教儀式から芸能への変化の過程を残している貴重なもの。クライマックスは「ぶっぱらい」です。それは病人に扮した人が布団に寝かされ、祈祷を受けて病を快癒させるもの。
【取材・文:苦田秀雄】
山梨県上野原市に伝わる無生野の大念仏は悲運の最期を遂げた護良(もりなが)親王と雛鶴姫を供養するため始まったとされています。旧暦1月16日と新暦8月16日、地区集会所に道場と呼ばれる舞台がつくられ、鉦や太鼓に合わせて一本太刀、二本太刀の踊りが続き、最後に病気治癒のための祈祷「ぶっぱらい」が行われます。(国指定 重要無形民俗文化財) 重要無形民俗文化財)