日本の祭りレポート
ことにじんじゃ れいさい
明治期、沿岸警備と開墾のために北海道には屯田兵が入植しました。37の地域に、家族を含め約4万人、総戸数7,337戸。1875(明治8)年、その第一陣(198人、108戸)が入ったのが札幌・琴似です。琴似神社の秋の例祭は、1881(明治14)年、明治天皇が北海道巡幸を終えた際、無事に東京にお帰りになるよう琴似の屯田兵が祈願したのに始まります。戊辰戦争で負けた仙台藩や会津藩のサムライ達で構成された琴似の屯田兵。極寒の荒野で彼らは辛酸をなめるような苦労を味わい、今の北海道の礎を築きました。彼らの子孫はいまも先人への深い感謝を忘れず、琴似神社近くの施設でその歴史を公開し続けています。祭りの日、トラクターでひかれる山車から聞こえるのは、にぎやかな屯田音頭。踊る女性陣は天上のご先祖に見せるように笑顔を振りまきます。鍬(くわ)を持ち、脇差しで草原をはらい、ひたすらに働きつづけた屯田兵もいまは安らかにその様子を見下ろしていることでしょう。
取材・文:加藤正明
1875(明治8)年、防衛と北海道開拓のため琴似に入植した「屯田兵」。
戊辰戦争で敗れた仙台藩、会津藩の武士が多く、仙台藩亘理(わたり)の初代当主、伊達成実がここに祀られました。秋の例祭は、「屯田おどり」や神輿渡御で活況を呈します。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り