日本の祭りレポート
きらいごう
「鬼来迎」は、地獄の様を演じる仏教劇です。それは仏教を信奉しなければ地獄に堕ちることを劇で教えるもの。それは子供でも理解でき、ひどく恐ろしく、不気味な内容。演者の舞台を踏む音、戸板を叩く音などもドンドン、バシバシ異様に大きく、迫力満点。幼児らも真剣に、恐る恐る観劇。閻魔様の裁量を受けて、生前悪事をはたらいた者は鬼に追われ、釜茹でにされ、刃物で刺され地獄に向かうのです。しかし最後に観音様が現れて鬼どもを説き伏せ、亡者を浄土に導きます。これはどんな教育よりも効果がありそう。劇が終わって古老がつぶやきました。“住んでいる虫生が浄土かも。毎日変わったことは何にも起きない”と。
【取材・文:苦田秀雄】
鬼来迎は、鎌倉時代に始まったと言われ、仏教布教のため、仏教を信仰しないと地獄に落ちて苦しむことを、劇によって分かりやすく説いたものです。大序、賽の河原、釜入れ、死出の山の地獄の様子を演じた四段と、和尚道行、墓参、和尚物語の寺建立縁起の三段とからなりますが、寺縁起の三段は今は演じられていません。(国指定重要無形民俗文化財)