日本の祭りレポート
きくままつりおともうまのはしりこみ
この祭りは500年ほど前、京都の「葵祭」の「走馬(そうめ)の儀」をまねて始まったと伝わります。驚くのは小・中学生たちが馬で疾走することです。加茂神社の鳥居から参道を一直線に走り、最後は神社脇の急坂をかけ上るのです。その距離およそ300メートル。ここに生まれた子供らにとってこの神事をやらねばならない宿命。それは親、祖父もこれをやったから。落馬すればかなりの怪我も覚悟。家族はあらゆるお守りを少年の体に取り付けます。頭に巻いた黄色い鉢巻きの中にも入っているのです。そこには親の愛があり、絆があり、地域の協働と愛がありました。子は地域の宝物。祭りが子を育てる。祭りを守ることが地域を守る、とはある少年の父親の言葉でした。この祭りに感じたのは人間賛歌。
【取材・文:苦田秀雄】
加茂神社の菊間祭で行われる「お供馬(おともうま)の走り込み」は、約600年前の室町時代から始まったと伝えられています。祭り用の鞍や装飾具をつけた馬に、「乗子(のりこ)」と呼ばれる子どもが乗り、鳥居から境内までの約300メートルを一気に駆け上がる勇壮華麗な祭りです。昭和40年、愛媛県の無形民俗文化財に指定されています。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り