日本の祭りレポート
かねこばらのむしおくりおどり
かつて虫送りの風習は全国の農村にみられましたが、農薬の普及や高齢化で鹿子原のような原型を残すものは稀少。古来、稲を荒らす害虫は音に反応して採りものにつくとされました。この習俗は稲穂が実りだす初夏に太鼓や笛、鉦などを鳴らしながら行列で集落を回り、稲を荒らす害虫を採りものや、まじないを書いた短冊などに集めて燃やすか、川に流すか、村境に捨てる鎮送(ちんそう)呪術(じゅじゅつ)*です。村境は他界。捨てて見えなくなったものは消失したことにするのが当時の考え。農民は田を命としてきました。それは必ず子孫に継がねばならない大切なもの。「たわけ者」の語源は他人に田をわけ与えるような馬鹿者のことなのです。
*鎮送呪術:害を与えるものや邪悪なものを葬る呪いで、風邪の神送りや厄送りもある
【取材・文:苦田秀雄】
鹿子原集落に200年以上続く「虫送り踊り」。毎年7月20日に、五穀豊穣を願う伝統行事として開催され、島根県の無形民俗文化財に指定されています。花笠に浴衣、紅たすき姿で腰に太鼓の男衆。そして乗馬姿のワラ人形。全国でも数少ない古形を残す、伝統の唄と踊りで、町内を練り歩きます。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り