日本の祭りレポート
いおうのおんせんじんじゃのつけまつり
附け祭とは、一般的に祭礼の余興、神賑い行事、あるいは余興として引き出す踊り屋台そのもののこと。この祭りは伊王野が天領(幕府の直接支配地)になった江戸後期に始まったものと推定されていますが、御神幸などは後年なくなったのでしょう、附け祭だけが氏子に支えられながら今日に至っています。囃子は江戸のそれに近く、上町・下町の屋台の上で競演される「出会い」はまるで「囃子と囃子のボクシング」。美しくもたくましい若者が屋台の上で相手を負かそうと一心不乱に奏で上げる笛太鼓、鼓、摺り鉦の響きのまあ見事なこと。きっと昔の人にとっても「この附け祭りだけはなくせない」格別な祭りだったのだろうとうなずけます。
取材・文:加藤正明
伊王野の温泉神社の祭礼は、宵祭り・本祭り・裏祭りと3日にかけて行われます。現在は、文化の日に合わせて11月3日(昔9月29日後に10月29日)を本祭りとし、その前後を宵祭り、裏祭りとしています。祭りの行事は、上町若連(30歳までの青年)、下町祭典保存会(はやし保存会)が行います。上町、下町のおはやしを乗せた屋台を町内で引き回し、祭り気分を盛り上げます。特に上町と下町の屋台が町の境界ですれ違う「出会い」と呼ばれる場面は、互いに競い合って祭り囃子が最高潮に達し、見ている者を圧倒させます。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り