日本の祭りレポート
はやちねじんじゃれいたいさい
早池峰神楽は早池峰神社に奉納する岳神楽と、大償(おおつぐない)神社奉納の大償神楽の総称です。さらにこれは能が大成される以前の民間芸能の要素を残すものとしてきわめて貴重。神楽殿には太鼓打ちと手平鉦、鉦打ちが座り、太鼓打ちは舞の最中に神歌を歌ったり、狂言の問答相手をします。演目は40番以上あり、大別すれば式舞、神舞、女舞、荒舞、番楽舞、狂言、権現舞に分れます。観客席から演者に温かいヤジが飛びます。「岳神楽」を伝承してきたのは妙泉寺門前に住む「六坊職」とよばれる人々です。演技が終われば直会(なおらい)*に参加し、神楽衆と語りあうのも格別。岳集落には修験者の宿坊があり、そこを宿に早池峰の高山植物を鑑賞するのも楽しいと思います。*直会:神前に供えた神饌を神事の後に皆でいただくこと
【取材・文:苦田秀雄】
霊山として古くから信仰されている早池峰山(はやちねさん)。
例大祭は山伏たちに先導された神輿渡御にお伴する40体余りの権現様(ごんげんさま)と、童子らによる神楽(しんがく)のお通りが長い列となって練り歩き、小さな集落を賑わせます。宵宮で6時間にわたって奉納される岳神楽(たけかぐら)と大償神楽(おおつぐないかぐら)は中世芸能の面影を今に残し、「早池峰神楽」として、昭和51年に国の重要無形民俗文化財に、また平成21年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。