日本の祭りレポート
はなかごまつり
担ぎ太鼓が“ドン ドコ”と先導し、山あいの道を色とりどりの飾りのついた花籠を背負った青年が歩いています。顔は化粧され、化粧まわし姿で背中に花籠。それは細く割った竹ヒゴに5色の色紙を巻きつけた「ヤナギ」という造花を竹製の目籠に挿したもの。たわわに実った稲穂を意味すると考えられます。青年は道中お酒を飲まされ、酩酊状態。奉納先は䖝井(むしい)神社。一行は1時間かけて神社に到着し本殿を一周。麒麟(きりん)獅子舞が奉納されます。真っ赤な衣装の猩々(しょうじょう)が踊ります。山のなかのなんとも不思議な世界です。祭りのあと、人々は「ヤナギ」をもらって家路につきます。縁起ものです。鳥取県の山間部だけに分布する、通過儀礼のひとつで品行方正な男性が務めるもの。これはメルヘンチックな祭りです。
【取材・文:苦田秀雄】
「花籠祭り」は八頭郡内の各地で行われる祭りであり、䖝井神社の花籠奉納は毎年10月28日に行われます。花籠とは竹を細く割ったものに五色の色紙を巻き付けた造花(ヤナギ)を同じく竹で編んだ籠に挿したもので、豊作への祈りと感謝を意味する捧げものと考えられています。祭礼後にはヤナギを抜き、輪にして持ち帰り、人家の屋根に投げ上げておくと火災や厄病除けになるといわれています。100年以上続く鳥取県東部の山間地域に広く見られる特徴的かつ伝統的な行事です。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り